書類選考をしている人なら、この1年で気づいているはずだ。妙に整った職務経歴書が増えた。
種明かしは簡単で、候補者はもうAIで書類を磨いている。私はキャリア相談も受ける立場なので候補者側の実態が見えるのだが「AIに見てもらった経歴書で面接に進めました」という人は明らかに増えてきた。正直に言うと、転職エージェントの形だけの添削より、AIに「採用担当目線で改善点を指摘して」と頼んだ方が精度が高いことも多い。エージェントの添削を待つ時代は終わりつつある。
一方で企業側も応募が多いポジションではAIで書類を捌き始めている。つまりAIが書いた書類を、AIが読む。この組み合わせで書類選考に何が起きるかが今回の話だ。
「文章の出来」はもう差にならない
まず起きるのは、指標の無効化だ。かつて職務経歴書の文章が整っていることはそれ自体が「仕事が丁寧そうだ」という間接的な証拠になっていた。誤字が多い書類、構成が崩れた書類は中身の前に落ちた。
いまは違う。文章の体裁はAIで数分で整う。書類が綺麗なことは本人の何の証明にもならなくなった。 これは嘆くことではなく、前提が変わったというだけの話だ。むしろ候補者がAIで書類を整えてくるのは、道具を使える証拠だとすら言える。
問題は同じ道具に同じ指示を出せば似た文章が出てくることだ。強みの言い回し、志望動機の組み立て、締めの一文。書類の「顔」が年々似てきていると感じる。整っているのに、読み終えて何も残らない書類が増えた。
それでもAIが盛れないものがある
ではもう書類では何も分からないのかというと、そうではない。AIが盛れない情報が残る。事実の粒度だ。
何人のチームで、どの立場で、何をどこまで自分がやったのか。うまくいかなかった案件で何を判断したのか。具体的な数字、固有のシステム名、失敗の中身。この粒度の情報は本人の中にしかなく、AIは持っていないものを書けない。逆に言えば、抽象的な表現しか並んでいない書類は、AIに任せて事実を渡していないか、渡せる事実がないかのどちらかだ。
これは求人票側で以前書いた「経験3年以上という年数は、できることを語らない」とちょうど鏡写しの話だ。年数や綺麗な言葉ではなく中身を書け、という要求は、いま候補者側の書類にも同じ強さで働いている。
採用側が変えるべきは「書類で見るもの」
以上を踏まえて、採用側への提案はシンプルだ。書類選考の基準を「文章の出来」から「事実の密度」に置き換えること。
整った表現に加点しない。抽象語の羅列に減点する基準を持つ。そして事実の粒度が高い書類は文章が不器用でも面接に通す。書類をAIで捌くにしてもこの基準を先に言語化しておかないと、AIは「整った文章」を高く評価する方向に流れやすい。AIが書いた書類をAIが褒める循環になったら、選考は何も見ていないのと同じだ。
面接の設計も少し変わる。書類の事実が本人の言葉で語れるかを確かめる場として使う。AIで整えた書類自体は責めなくていい。確かめるべきは書類の裏に事実があるかどうかで、文章を誰が書いたかではない。
書類選考はなくならない。ただ「何を見る場か」を更新しなかった会社から順に、機能しなくなっていく。候補者側の道具が変わった以上、見る側も変わるしかない。
セコネは採用業務のAI活用支援の中で、AI時代の選考基準の設計もあわせて支援している。書類が「読めているようで読めていない」と感じたら、一度ご相談いただきたい。
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著者:高田 祥
セキュリティ人材専門の採用コンサルタント。株式会社セコネ代表。
情報処理安全確保支援士(登録番号 第019946号)。上級個人情報保護士。個人情報保護監査人。CompTIA Security+。
セキュリティベンダー・事業会社のセキュリティ採用を、職種設計からスカウト・面接設計まで一貫して支援。採用業務でのAI活用に関する整備支援にも対応。