「自社のエース、適性検査で受かりますか?」
採用コンサルとしてクライアントに必ず聞く質問がある。
これを投げると、現場が固まる。多くの会社で、答えが出てこない。「受けさせたことがない」「分からない」が大半だ。
──そして、実際に受けさせてみると、相当な確率で「落ちる」。
採用業界で誰も大きな声では言わないが、私はクライアントには10年以上同じことを伝え続けている。
適性検査は、入れ続ける理由を一度棚卸ししたほうがいい。
先に結論を言うと、この記事のメッセージはそれだけだ。
クライアントの実例:エースが人柄スコア2点だった
実際にあった話を1つ。
あるクライアントで、適性検査を導入していた。人柄スコアが10点満点で「5点未満は足切り」というルールで運用していた。
「念のため、御社で一番活躍している面接官のエース級人材に、この適性検査受けてもらえませんか?」
一つ重要なのが「対策等はもちろん無しでいきなり、です」
そう提案して、社内で受けてもらった。
結果は、人柄スコア10点満点で2点。
その会社のルールに当てはめれば、即・書類落ちのラインだ。現場のエースが、自社の適性検査で落ちる。
採用責任者は黙ってしまった。
その後、適性検査を廃止した。何が起きたか。
面接通過者の数が、倍になった。
それまで適性検査で機械的に弾かれていた候補者の中に、面接で会えば「すぐ欲しい」と判断される人が、相当数いた。エースが2点で落ちる仕組みで、現場が欲しい人材の何割を逃していたかは、もはや誰にも分からない。
これは単発の事例ではない。私が支援してきた中で、エースを受けさせて「想定通りの満点」が出たことは、1社も無い。だいたい想定より下回る。場合によっては足切りラインを大きく割り込む。
それが、適性検査の現実だ。
50代の即戦力にSPI、辞退されて数段上の会社へ
もう1つ、別の角度の話を。
50歳の現職での面接官経験もあり、CTO候補級の人材を、ある企業に推薦した。書類選考後、企業から「1週間以内に適性検査(SPI課題)を受けて下さい」という通知が届いた。
候補者の反応はこうだった。
「年齢に関係なく一律で出す会社は、何も考えていない。受けない」
辞退された。
その方は数日後、別の会社で内定を受けた。最初の会社よりも数段上の事業会社で、年収も100万円以上上がる条件だった。
新卒・第二新卒に適性検査を出す意味は分かる。母集団が大きく、足切り基準がないと回らない領域だからだ。
ただ、CTO候補・即戦力幹部に、新卒と同じSPIを送る。これは「自社が候補者をどう見ているか」が一発で伝わるシグナルになる。
実際にその候補者から後日話を聞けた。
「私も面接官をしているので分かりますが、さすがに50代にSPIというのは何も考えてないなと。業務でもそうなんでしょうし、組織体制が見えてしまいました。そんな会社には行きたくない」これが正直な「現場の」生の声だ。
機会損失は、適性検査の運用コスト以上に大きい。
適性検査で「見たい中身」は、面接で全部見抜ける
ここで、「いや、適性検査でしか見えない中身がある」という反論はあるはずだ。
人柄。思考特性。ストレス耐性。価値観の傾向。
これらを定量化したい気持ちは理解できる。
ただ、採用コンサルとして現場で見てきた範囲では、これらは全部、面接設計で見抜ける。
- 人柄 → 過去の意思決定について「なぜそう判断したか」を3階層深掘り
- 思考特性 → 答えの出ない問いを投げて、整理の仕方を見る
- ストレス耐性 → 失敗事例を時系列で語ってもらい、どこで止まったか・どこで立て直したかを聞く
- 価値観 → 仕事人生で一番譲れなかったポイントを、具体的なシーンと共に話してもらう
定量化された数字より、面接の中で出てくる言葉の選び方・間の取り方・例示の具体性のほうが、はるかに解像度が高い。
そして面接は、双方向だ。候補者も「この会社の面接官、何を見ているか」を見ている。適性検査は一方通行で、候補者からの信頼を得られない。
採用コンサルに入っていて「この会社は本気だ、良い会社だ」と思う会社の質問は決まっている。
「こういう所を見抜きたいんですがどう聞けば良いですか?」
これを考えられる、悩める会社は、適性検査をやっていない。面接で見抜くために「考え抜いている」からだ。
適性検査に「逃げて」いない。
それでも入れ続ける構造を、採用責任者として疑い直す
ここまで読んで、「いや、うちもやめたいが、社内事情で動かせない」と感じる方は多いと思う。
適性検査が廃止されない構造は、だいたい3つある。
-
「全員に同じ基準で評価している」という安心感
→ 機会均等のフリができる。実態は機会均等ではなく機会の機械的損失だが、見た目は揃う -
経営層への説明用ツール
→ 「人柄スコア◯点でしたので落としました」と言えば、定量的に説明できる。中身は問われない -
人事責任の所在の分散
→ 採用ミスがあった時、「適性検査では問題なかった」とツール側に責任を分散できる
3つとも、採用責任者の保身としては機能する。ただ、採用そのものが前に進む構造にはなっていない。
「適性検査をやめると、社内で説明できない」と感じる時こそ、面接で見抜けなかったのか?を考えた方が良い。
候補者によく言うアドバイス「他責になるな、自責で話せ」。
適性検査に頼るのは、採用側が自責から逃げてませんか?
そして、エースを受けさせて、何点出ましたか?
その数字を社内で共有して、「これでも続けますか?」と問うところから始まる話だ。
採用したいなら、立ち止まる時間を取る
セコネが採用コンサルでクライアントに伝えているのは、こういう話だ。
「採れない」というならそもそものやり方を疑え。常識を疑え
ひとつの手法を変えるだけで、通過者が倍に増えるかもしれません。即戦力に辞退される機会損失が減るかもしれません。何より、採用業務に使っている時間とコストが、本当に必要なところに回るかもしれません。
「うちの適性検査、見直しの時間を取れていないな」── そう感じたタイミングが、見直し時です。
著者:高田 祥
セキュリティ人材専門の採用コンサルタント。株式会社セコネ代表。
情報処理安全確保支援士(登録番号 第019946号)。上級個人情報保護士。個人情報保護監査人。CompTIA Security+。
セキュリティベンダー・事業会社の採用を、職種設計からスカウト・面接設計まで一貫して支援。