カジュアル面談をしていて「1年後の転職に向けて情報収集しています」と言われることは多くないだろうか。私は企業の立場で面談していて、こう言われたら正直に候補者に伝えていることがある。厳しいようだがその情報収集は残念ながらほぼ意味がない。長くても3カ月で決めた方が良い。 採用の要件は、刻々と変わるからだ。
この相談はよく候補者向けサービス「セコネキャリア」で受けるものだ。1年後の転職を見据えて情報収集している人は「めちゃくちゃ多い」のが実情だ。だからこそ、採用担当としては「伝えるべき事実は伝えた方が良い」。
採用要件は毎週変わっている
採用支援の現場にいると急に要件が変わることはザラにある。昨日までは「若手が良い」と言っていたのに急に「シニア層で、40代が良い」...ただこれには理由がある。面接をするごとに面接官だって目線が変わるし、誰かひとり入社したらバランスは変わって当然だ。
経営会議で社長が鶴の一声を発したのかもしれない。複数社の支援をしていて3カ月要件が全く同じだった会社は、記憶にない。何かしらは変わるものだ。
ただどうだろうか。内部要件が変わったとして、求人票に反映しているだろうか?否、ほとんどの企業が「最初作ったまま」だと思う。
この理由も多々あり、媒体ごとに掲載のルールがあり更新が大変というケース。求人票公開を受け持つのが別部署だったり、広報担当に伝えて反映までに1カ月かかるというケース。文言を変える権限がないケースまで、多々理由はある。
外から見える求人情報と、社内の生きた要件は、常にズレている。 これが世の実情でもある。ただ「仕方ない」と思ってはいけない。だからこそ求人票の作りこみは大事だし、面談や面接で、変更点はしっかり「こちらから」候補者に説明すべきということでもある。
さらにこの数ヶ月はAIの影響が特に大きい。「この業務はAIでできるんじゃないか」「採用の前に検討したか」という議論が、どの企業でも毎日のように起きている。ポジションの前提そのものが揺れているのだから「来月動くための情報収集」でさえ手遅れになるケースが出ている。
そのため冒頭の通り私は候補者には「遅くても、今情報収集しているなら3カ月以内には決めた方が良い」と、はっきり言っている。
未来を無理に語るな!
ここまでは候補者側の話に見えるが鏡を返すと採用側も同じ構造の中にいる。1年先の採用計画を具体的に語れる会社は実はほとんどない。
それなのに、採用広報や面談の場では未来を語りたがる。「これから拡大していきます」「体制を強化する予定です」。悪気はないのだが実行できるか分からない約束は、入社後に「話が違う」の火種になる。要件が毎週変わる世界で未来を約束するのは、構造的に無理があるのだ。
武器になるのは「今」の解像度
では何を語るべきか。今この瞬間の要件と実態だ。
いま何のポジションが本当に空いていて、なぜ空いたのか。いまのチームに何人いて、何が回っていないのか。直近で要件がどう変わったのか。この「今」の解像度が高い会社は、カジュアル面談でも選考でも信頼される。候補者は未来の約束よりも今を正直に語れる会社を「入社後も正直に話してくれる会社」だと読むからだ。ぶっちゃけ変わって当然だ、というのは候補者だって分かっているものだ。だからこそ「今はこうだ、でも1年後は分からない。だから今の弊社に興味を持ってくれるなら今受けて欲しい。」これぐらい言ったっていいと思っている。
現場はどうすればいいかはシンプルだ。面談に出る人が「今」を話せる状態を作ることに尽きる。現場の状況を面談担当が把握してから臨む。応募時や求人票を出した時から業務や状況が変わったのであればしっかりこちらから説明するようにする、面接であってもだ。5分で良い、自社説明をじっくりすればいい。
1年後を語るより、今を正確に語る。採用広報も面談も選考も結局はここに尽きると感じている。情報の鮮度が武器になる時代に、社内の「今」を言語化する仕組みを持っているかどうか。採用がうまくいかない理由を媒体や母集団に求める前に、一度ここを点検してほしい。
面談で語る「今」の言語化は、セコネが採用コンサルティングで支援している中核の1つだ。スカウトやカジュアル面談の設計とあわせてご相談いただきたい。
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著者:高田 祥
セキュリティ人材専門の採用コンサルタント。株式会社セコネ代表。
情報処理安全確保支援士(登録番号 第019946号)。上級個人情報保護士。個人情報保護監査人。CompTIA Security+。
セキュリティベンダー・事業会社のセキュリティ採用を、職種設計からスカウト・面接設計まで一貫して支援。採用業務でのAI活用に関する整備支援にも対応。