今回の結論を先に言う。面接で志望動機を聞いて志望度を測るのは、もう機能しない。むしろ会社の側が面接で自社を営業した方がいい。
サービスを一つも答えられないまま、受かった
私が最初の転職で入社したのはリクルートテクノロジーズだった。
当時の転職エージェントには「志望動機が大事だ」と言われていた。人事の強い会社だから志望度をしっかりアピールしろ、と。
今だから言えるが面接を受けた時点で私は「ホットペッパーがリクルートのサービス」だと知らなかった。リクルートのサービスを一つ挙げろと言われたら、一つも答えられない状態だった。
ではなぜ受かったのか。
採用サイトの社長メッセージと社員インタビューだけを暗記して行ったからだ。そしてそれを自分事にして言葉にした。
「◯◯社長がこう言っていますが、私も同じで」
「セキュリティ部署の◯◯さんがインタビューでこう話されていましたが、私も同感で」
サービス名は答えられないのに、志望動機だけは通った。
入社してから「へえ、カーセンサーもゼクシィもリクルートなんだ」と初めて知った。正直なところ入ってからサービスを覚えるのには苦戦した。ほぼ使ったことがなかったからだ。
辞めて10年以上経つが、いまも使っている
そのリクルートテクノロジーズを辞めてから、既に10年以上経つ。
それでも明日はホットペッパーグルメで予約した店に行くし、支払いはリクルートカードプラスだ。入ってから好きになり、辞めてからも使い続けている。
事業会社を受けるなら、その会社のサービスを調べてから行かないと受からない。普通はそうだ。だが「入ってから」好きになろうと思えば、なれる。
これは採用側にも言いたいことだ。
「サービスへの愛」を選考で求める会社の矛盾
事業会社は特に、自社サービスへの愛を選考で求める。そこが語れないと、まぁ落ちる。落とす。
当然と言えば当然だ。だが、入社時点からそのサービスを大好きな人なんて稀だ。表に出ている情報は一部でしかなく、裏側は入ったからこそ知ることができる。入ってから好きになることだってある。
しかも今は公開情報をAIが一発で引っ張ってきて要約してくれる。社長メッセージもIR資料も社員インタビューも、まとめて読み込ませれば数十秒だ。それを暗記してうまく話せば志望動機は完成する。
私が10年以上前に手作業でやったことを、今は誰でも数分でできる。
つまり「志望動機がよく書けている」ことはもう志望度の証明にならない。上っ面の情報で志望度を測る選考はもう成立しない。
本当に見たいのは、そんな上っ面の情報だろうか。そうではないはずだ。
志望度を何度も確認する会社ほど、取りこぼす
現場でよく見るのが、面接の前に「志望度を確認しておいてください」とエージェントに依頼する会社だ。面接の場でも志望度と選社軸を一次でも二次でも聞く。
だが考えてみてほしい。選考の途中で志望度を聞かれて「第三志望です」と答える候補者がいるだろうか。「第一志望です」と答えるに決まっている。
聞けば聞くほど、候補者は値踏みされていると感じる。志望度は上がらないどころか下がる。
そして候補者の側からすると、会社の中身を知る手段は面接しかない。求人票と採用サイトを読んだ後で生の情報が手に入るのは、面接の場だけだ。面接官の人柄がそのまま会社の人柄として受け取られる。
その貴重な時間を、答えの決まっている質問で潰している。
だったら、面接で営業した方がいい
だから私はむしろ面接の場でサービスの「営業」をすべきなんじゃないかと思っている。それで好きになってくれるなら良いじゃないか。そのくらいのスタンスでないと、今後の事業会社の採用は勝てない。
お見合いと同じだ。相手に「私のどこが好きですか」と何度も聞くより、まず自分がどういう人間で、一緒にいると何が面白いのかを話した方がいい。
面接の冒頭で、自社の説明に時間を割く。何をやっている会社で、いま何に困っていて、入ってもらったら最初に何を任せたいのか。それを候補者が聞かれる前に受け取れると、その後の質疑の中身が変わる。
営業した結果として好きになってくれた人を、経験が合うことを確かめた上で迎える。これでいいはずだ。
セキュリティ採用では、この差がもっと開く
セキュリティ人材の採用ではこの構造がさらに効いてくる。
セキュリティエンジニアが転職先を選ぶとき、見ているのはサービスへの愛着ではない。どんな体制で、どこまで裁量があり、何を任されるのかだ。監視だけをやらされるのか、設計から入れるのか。経営に報告する立場になれるのか。
そこに「弊社のサービスをご存知ですか」「なぜ当社なんですか」と聞いても、返ってくるのは表面をなぞった答えにしかならない。彼らが知りたいことと、会社が聞きたいことがすれ違っている。
私が支援に入るときは面接の質問を足す前に、まず会社側が話す内容を整理してもらうことが多い。何を任せるポジションなのかを言語化すると、候補者から出てくる質問の質が変わり、結果として見極めもしやすくなる。
聞く量を増やすより、話す中身を決める方が早い。
入ってから好きになる人を、迎えにいく
私はリクルートのサービスを一つも知らないまま入社し、10年以上経った今も使い続けている。
入社時点の「好き」はそんなに信用できるものではない。AIが志望動機を数分で作れるようになった今は、なおさらだ。
測るのをやめて、営業する。それだけで面接の1時間は候補者を見極める時間にも口説く時間にも変わる。
御社の面接は志望度を確かめる時間になっているだろうか。それとも入りたくなる理由を渡す時間になっているだろうか。
セコネは面接で何を聞くかの前に「何を話すか」から設計を支援している。
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著者:高田 祥
セキュリティ人材専門の採用コンサルタント。株式会社セコネ代表。
情報処理安全確保支援士(登録番号 第019946号)。上級個人情報保護士。個人情報保護監査人。CompTIA Security+。
セキュリティベンダー・事業会社のセキュリティ採用を、職種設計からスカウト・面接設計まで一貫して支援。採用業務でのAI活用に関する整備支援にも対応。

